宅建業法

「宅建業の免許」基礎知識

「宅建業の免許」基礎知識

ここでは、宅建業法の基礎知識の一つ「宅建業の免許」に関する基礎知識について説明をしていきます。

押さえるべきポイントが多いテーマですが、いずれも宅建試験で出題されている重要ポイントになります。細かい知識は後回しで構いませんので、まずは概略を掴むところから始めましょう!

「宅建業の免許」とは?

まずは意味から確認しましょう。「宅建業の免許」とは宅建業を営むのに必要な免許のことです。

宅建業の免許 = 宅建業を営むのに必要な免許

実は、宅建業はだれでも自由にやってよいものではなく、原則として「免許を有する者だけが宅建業を営める」というルールになっています。

こうしたルールが採用されている理由は宅建業者としてふさわしくない者を排除し、そのお客さんの利益を守る点にあります。くだけた言い方をすれば、「お客さんが損をしても自分が儲かればそれでいい」という不届き者には宅建業をやらせないようにしているという訳です。

車の運転にも免許が必要ですが、これは「交通事故を防止するため、運転に必要な交通ルールの知識や運転技能がない者には運転をさせない」という理由に基づくものですよね。

「不利益を回避するために、ちゃんとしている者だけに免許を与え、それをやらせてあげる」という点で、自動車の運転免許制度と宅建業の免許制度は同じような仕組みになっています。

免許不要の例外

実はこの「宅建業には免許が必要」というルールには、例外があります。それは、「宅建業の免許がなくても宅建業ができる者がいる」というものです。

まずは結論から押さえてください。以下の者は、宅建業の免許がなくても宅建業を営むことができます。

①国・地方公共団体

②信託会社・信託銀行

まず、①ですが、これは「国や地方公共団体は免許がなくても宅建業を営むことができる」という捉え方ではなく、「国や地方公共団体は免許がなくても宅建業にあたる行為ができる」という意味で理解しましょう。例えば、国による国有地の売却が宅建業にあたる場合でも、国は宅建業の免許がなくても、それをすることができます。

また、信託会社や信託銀行は免許がなくても宅建業を営むことができます。信託会社や信託銀行は法律の定める厳しい手続きを経て設立されるものなので、免許なしに宅建業をやらせても特に問題ないといえるからです。

もっとも、信託会社や信託銀行が宅建業を営む場合、行政機関はその事実をきちんと把握する必要があります。そこで、これらが宅建業を営む場合には、免許は不要ですが、国土交通大臣への届出は必要になります。

免許権者

続いては、「宅建業の免許は誰にもらえばいいか?」という点について説明します。

宅建業の免許を与える権限を有する者のことを「免許権者」と言いますが、宅建業法はこれを「国土交通大臣」又は「都道府県知事」であると定めています。

免許権者 = 国土交通大臣 又は 都道府県知事

すなわち、新しく宅建業を始めたい人や会社は国土交通大臣か都道府県知事のどちらかに申請をすることで、宅建業の免許がもらえる仕組みになっています。

では、宅建業の免許が欲しい場合、「国土交通大臣」と「都道府県知事」のどちらに免許申請をすれば良いのでしょうか。…もちろん「自分の好きな方を自由に選べる」というわけではありません。

この点について、宅建業法は「事務所の設置場所で決まる」としています。具体的には、以下のような振り分けになります。

1つの都道府県内にだけ事務所を設置する場合

→ 都道府県知事が免許権者となる

複数の都道府県に事務所を設置する場合

→ 国土交通大臣が免許権者となる

上記について、もう少し詳しく説明しましょう。

新たに宅建業を始める人や会社の「事務所」が一つの都道府県にだけ設置されるのか、それとも、複数の都道府県に設置されるのかによって、免許権者の振り分けがなされるということです。

なお、ここでいう「事務所」とは、宅建業を営む場所やお店のこと(「本店」や「支店」のこと)だと理解しておけば、とりあえずOKです。

試験対策上は、もっと正確に「事務所」の意味を押さえておく必要がありますが、それはまた別の機会に説明することにします。効率の良い勉強のためにも、細かい話はあとにして、まずはざっくりと全体像をつかむことが大切です。

では、この「免許権者の振り分け」のルールについての理解を深めるために、具体例を用いて説明していきましょう。

ケース1

A社が東京都に1つだけ事務所を設置し、新たに宅建業を始める場合、A社は誰から宅建業の免許をもらえばよいでしょうか?

上記のケースは、「東京都」という一つの都道府県にだけ事務所を設置する場合なので、A社は東京都知事から宅建業の免許をもらうことになります。

なお、A社が複数の事務所を設置する場合でも、そのすべてが東京都に設置されるのであれば、「事務所は一つの都道府県内にだけ設置される」ということになるので、宅建業の免許は東京都知事から受けることになります。注意してください。

では、次のケースはどうでしょう?

ケース2

B社が東京都に「本店」、神奈川県に「支店」」を設置し、その双方で宅建業を営みたい場合、B社は誰から免許をもらえばよいでしょうか?

このケースは、東京都と神奈川県という複数の都道府県に事務所を設置する場合なので、B社は国土交通大臣から免許を受けることになります。

以上が「免許権者の振り分け」に関するルールです。

 

免許を受けられない者

続いては、「宅建業の免許をもらえない者」について説明します。

先ほど説明した通り、宅建業の免許が欲しい人や会社は、振り分けルールに従って、国土交通大臣又は都道府県知事に申請をする必要があります。

しかし、申請さえすれば、誰でも宅建業の免許が受けられるかというと、そういう訳ではありません。

世の中には、いい人・いい会社だけではなく、悪い人・悪い会社も存在します。そして、そのような人や会社には、宅建業をやらせるべきではありません。

そこで、宅建業法は、そうした宅建業者としてふさわしくない人や会社は、たとえ申請をしても、宅建業の免許がもらえないような仕組みを定めています。

このような仕組みを「宅建業免許の欠格要件」と言います。「欠格要件」とは、簡単に言えば、宅建業者にふさわしくない人や会社の条件のことです。この欠格要件にあてはまってしまう人や会社は、宅建業の免許を受けることができません。

では、宅建業法が定める「欠格要件」にはどのようなものがあるのでしょうか?

ここをキッチリと押さえておくことは試験対策上、とても大切なことですが、欠格要件には様々なものがあり、これらを一度にすべて頭に入れようとすると、パンクしてしまいます。

ですから、ここでは「とりあえず分かりやすいもの」をいくつか紹介しておきましょう。

欠格要件の具体例

・暴力団員

・暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

・破産者で復権を得ない者

・宅建業に関し不正又は不誠実な行為をする恐れが明らかな者

まず、「暴力団員」であることは欠格要件にあたります。よって、暴力団のメンバーである者が宅建業をやろうと免許申請をしても、免許を受けることができません。

理由は暴力団員が宅建業をやると、お客さんを脅して無理やり粗悪な不動産を買わせるなど、お客さんの利益を害する結果になる可能性が高いからです。

また、「暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」も欠格要件にあたります。ヤクザをやめてあまり時間がたっていない者も宅建業をやらせるには危険だといえるからです。

ちなみに、会社の場合は、取締役などの役員に「暴力団員」や「暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」がいると、欠格要件にあたります。例えば、取締役の一人にヤクザがいるような会社は、申請をしても、宅建業の免許を受けることができません。

上記のほかにも、欠格要件はいろいろありますが、ざっくり言えば、宅建業法は「コイツに宅建業をやらせたらマズイ」といえるようなものを欠格要件として定めているという訳です。

宅建業の免許の効力

続いては、「宅建業の免許の効力」について説明します。

免許の有効期間

まずは、時間的な効力である「有効期間」ですが、宅建業の免許の有効期間は5年とされています。すなわち、一度宅建業の免許を受けると、5年間は免許の効力が持続し、その間は宅建業を営むことができるということです。

この「5年」という有効期間は、国土交通大臣に免許をもらった場合も都道府県知事に免許をもらった場合も同じなので、注意しましょう。

なお、有効期間満了後も引き続き宅建業を営みたい宅建業者は、更新手続きを取る必要があります。更新申請ができる期間も法律で定められており、有効期間満了日の90日前から30日前の間に申請書を提出しなければなりません。

また、更新後の免許の有効期間も「5年」となりますので、宅建業者は宅建業を続ける限り、5年ごとに更新手続きを取らなければならないということになります。

宅建業免許の有効範囲

続いて、宅建業免許の場所的な効力ですが、これは「全国」に及びます。すなわち、宅建業の免許を有する者は、全国で宅建業を営むことができます。例えば、東京都知事から宅建業の免許をもらった業者は、東京都に限らず、北海道や沖縄など日本全国で宅建業を営むことができます。

「東京都知事から免許を受けた宅建業者は、東京都内でしか宅建業ができない」といった選択肢は×になりますので、注意してください。

まとめ

「宅建業の免許」に関する基礎知識の説明は以上です。

宅建試験対策としては、ここで説明をした各事項について、もっと踏み込んだ細かい知識を押さえる必要があります。ここで学んだことをベースにして、お手持ちのテキスト等を読み込むことで、理解を深めてみてください。

それでは、今日はここまでとします。お疲れさまでした。