こちらでは、「宅建士」に関する基礎知識として、以下の3点について説明していきます。
- 宅建士の事務
- 宅建士になるための3ステップ
- 宅建士の義務
さっそく、「宅建士の事務」から始めましょう。
Contents
宅建士の事務
「宅建士の事務」とは宅建士でなければできない仕事のことです。具体的には、以下の3つがあります。
- 重要事項説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 37条書面への記名・押印
上記①~③はいずれも宅建士にしかできない仕事ですので、宅建士ではない者がこれらをすることは宅建業法違反となります。
それぞれの内容について、順番に説明していきましょう。
①重要事項説明
「重要事項説明」とは宅地や建物の売買契約を結ぶ前に知っておくべき重要事項を宅建士がお客さんに説明してあげることです。
皆さんの中にも、新しい携帯電話を買う際に、店員さんから月々の支払額や解約のルール、契約プラン、オプションなどについて色々と説明を受けたことがある方は多いのではないでしょうか。簡単に言えば、あれの宅建業バージョンが「重要事項説明」であるというイメージです。
この「重要事項説明」には「宅建業のお客さんが宅地や建物の取引で失敗してしまうのを防止する」というメリットがあります。すなわち、不動産取引のプロである宅建士が、契約前に知っておくべき重要事項をしっかりとお客さんに説明してあげることで、取引対象や契約内容に関する誤解をなくし、これにより契約後の後悔を防ぐ仕組みが「重要事項説明」であるというわけです。
②重要事項説明書への記名・押印
続いては、「重要事項説明書への記名・押印」について説明します。
「重要事項説明書」とは重要事項説明における説明事項を記載した書面のことです。宅建業法のルールでは、宅建士が重要事項説明をする際は、この書面をお客さんに交付しなければならないことになっています。
この書面に記名・押印すること、すなわち、名前を書いてハンコを押すことが「重要事項説明書への記名・押印」であり、これは宅建士にしかできない仕事になっています。
ちなみに、宅建士が重要事項説明書に記名・押印をする意味は、宅建士に重要事項説明書の内容に問題がないことを確認させる点にあります。それゆえ、宅建士は重要事項説明書の内容をしっかりと確認し、誤り等がないことを確認したうえで、記名・押印をしなければなりません。
③37条書面への記名・押印
続いては、「37条書面への記名・押印」について説明します。
「37条書面」とは宅建業法37条の定めによって、宅建業者がお客さんに対して交付しなければならない書面のことです。この書面には、お客さんが結んだ契約の内容(取引物件の代金や引渡時期など)が記載されます。
宅建業者のお客さんは、37条書面を見ることによって、自分がどのような契約を結んだのかをちゃんと理解することができます。こうしたことから、宅建業法37条は宅建業者がお客さんに対して37条書面を交付するように定めているのです。
例えば、宅建業者Aがお客さんBに対して甲建物を販売する旨の売買契約がAB間で締結されたとします。この場合、AはBとの売買契約の内容を記載した書面(37条書面)をBに交付しなければなりません。
以上が「37条書面」についての簡単な説明になります。
そして、この37条書面に記名・押印することは宅建士にしかできない仕事になっています。宅建士が37条書面に記名・押印する意味は、宅建士に37条書面の内容に問題がないことを確認させる点にあります。「重要事項説明書への記名・押印」と同じ意味です。
「宅建士の事務」についての説明は以上です。ここで登場した「重要事項説明(書)」や「37条書面」については、また別の機会に詳しく説明していきたいと思います。
宅建士になるための3ステップ
続いて、「宅建士になるにはどうすればよいか?」について説明します。
宅建業法は、以下の3つの条件をクリアすることで「宅建士になれる」と定めています。
① 宅建試験に合格する
② 宅建士登録を受ける
③ 宅建士証の交付を受ける
上記からもわかる通り、「宅建試験合格者=宅建士」ではありません。宅建士になるためには、試験合格に加えて、「宅建士登録」や「宅建士証」も必要となります。
こうした「宅建士になるための3ステップ」について、もう少し掘り下げて説明しましょう。
第1ステップ「宅建試験合格」
宅建士になるための第1ステップは「①宅建試験に合格する」というものです。つまり、「宅建士になるためには、まず宅建試験に受からなければならない」ということであり、この事実は多くの人がすでに知っていることと思います。
では、なぜ宅建士になるためには、宅建試験に合格しなければならないのでしょうか?
それは、宅建士として仕事をするには、不動産やそれに関する法律知識が必要不可欠だからです。宅建試験は、こうした知識がきちんと備わっているかどうかをチェックし、宅建士として十分な知識を有する者だけを合格とする仕組みになっているのです。
なお、宅建試験でカンニングや替え玉受験などの不正行為を行うと、合格の取消しや最大3年間の受験禁止措置などの厳しい処分を受ける場合がありますので、注意してください。
第2ステップ「宅建士登録」
次に、宅建士になるための第2ステップ「②宅建士登録を受ける」について説明します。
「宅建士登録」とは都道府県知事に申請をして、宅建士資格登録簿に自分の名前や住所、生年月日などの基本情報を載せてもらうことです。
「宅建士資格登録簿」とは宅建士となる資格を有する者の名前や住所、生年月日等の基本情報がまとめられている公簿で、各都道府県知事が管理しているものをいいます。
簡単に言えば、「宅建士資格登録簿」とは都道府県ごとに存在する宅建士の有資格者リストのことであり、「宅建士登録」とは、宅建試験に合格した人が都道府県知事に頼んで、そのリストに自分の名前を載せてもらうことです。
なお、「宅建士登録」は単に「登録」と言われることもありますが、正確には「宅地建物取引士資格登録」といいます。一応、覚えておきましょう。
もう一つ、専門用語を紹介しておきます。宅建士登録を受けたい人は、都道府県知事に対して申請する必要があるわけですが、このように、宅建士登録を受けるために都道府県知事に対して行う申請のことを「登録の申請」といいます。
そして、この申請は自分が合格した宅建試験の受験地の都道府県知事に対して行うものとされています。申請先は自分の住所地の都道府県知事ではありませんので注意してください。
例えば、神奈川県に住所があるAが、東京都で宅建試験を受験して合格したとします。この場合、Aが宅建士登録を受けるための申請先は、神奈川県知事ではなく、東京都知事になります。
このような「宅建士登録の申請先」に関する基礎知識に加えて、もう一つ押さえておいて欲しいことがあります。
それは、「宅建士登録」は申請さえすれば、だれでも受けられるものではないということです。言い換えると、一定の条件を満たす者だけが、申請により「宅建士登録」を受けられる仕組みとなっています。
このように、宅建士登録を受けるために満たさなければならない基準のことを「登録の基準」と言います。これに関する詳しい内容は以下の記事で説明していますので、こちらもあわせて確認してみてください。
https://suraho.com/toroku-kiso
第3ステップ「宅建士証の交付」
続いては、宅建士になるための第3ステップ「宅建士証の交付を受ける」について説明します。
「宅建士証」とはそれを持つ者が宅建士であることを証明してくれる身分証明書のことです。車の運転免許証に似たようなものであると考えてもらえばOKです。
「宅建士証」には、氏名・住所・生年月日といった持ち主の基本情報やその有効期限などが記載されているほか、顔写真付きとなっています。このあたりは車の運転免許証と同じです。
なお、「是非とも実物を見てみたい!」という人は「宅建士証」で画像検索をしてみてください。住所などの個人情報にはモザイクがかけられていますが、たくさんの方の宅建士証をみることができると思います。
話を戻しましょう。次は、「宅建士証はどうやって手に入れるのか?」について説明します。
宅建業法のルールでは、登録先の都道府県知事に交付の申請をすることで宅建士証をもらえる仕組みとなっています。
例えば、東京都知事の宅建士登録を受けているAは、東京都知事に対して宅建士証の交付申請をすることで宅建士証を手に入れることができます。
また、宅建士証の交付を受けるためには、原則として都道府県知事が指定する講習(法定講習)を受けなければならないルールとなっています。
宅建士証の交付を受けるのに、法定講習を受講しなければならない理由は、「講習を通じて宅建士となろうとする者に実務の最新知識などを身に着けてもらう」という点にあります。
少々長くなりましたが、「宅建士になるための3ステップ」についての説明は以上になります。
宅建士の義務
最後に、「宅建士の義務」について説明します。宅建業法には、以下のような義務が「宅建士の義務」として定められています。
- 公正かつ誠実に事務を行う義務
- 宅建業従事者と連携に努める義務
- 信用失墜行為をしてはならない義務
- 知識及び能力の維持向上に努める義務
上記の義務について定めた条文は以下の通りです。条文の言い回しを正確に暗記する必要はありませんが、それぞれの内容についてざっくりと押さえておくようにしてください。
宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。
まとめ
「宅建士」に関する基礎知識は以上です。宅建士登録や宅建士証についてもう少し詳しく知りたい人は、本文中にあるリンク先の記事にも目を通してみてください。
それでは今日はここまでとします。お疲れさまでした。