こちらでは、「媒介契約」に関する基礎知識として、以下のテーマについて説明していきます。
- 媒介契約とは?
- 媒介契約の種類
- 媒介契約に関するルール
- 媒介契約書の記載事項
さっそく、「媒介契約とは?」から始めましょう。
Contents
媒介契約とは?
「媒介契約」とは一方が契約相手を見つけてあげることを約束し、他方がそれに対して報酬を支払うことを約束する契約のことです。
例えば、「甲宅地を売りたい」と考えているお客さんBのために、宅建業者Aが買主となる者を見つけてあげることを約束し、買主が見つかった場合にBがAに対して報酬100万円を支払うことを約束するというような契約のことです。
媒介契約を結ぶと、宅建業者は「依頼者のために契約相手を見つける義務」を負います。一方、依頼者であるお客さんは「宅建業者に対して報酬を支払う義務」を負います。
媒介契約の基本的な説明は以上です。
媒介契約の種類
続いて、「媒介契約の種類」について説明します。「媒介契約」には以下の4種類があります。
- 一般媒介契約(明示型)
- 一般媒介契約(非明示型)
- 専任媒介契約(非専属型)
- 専任媒介契約(専属型)
まず、大きな分類として、媒介契約は「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の2つに分類されます。
また、一般媒介契約は「明示型」と「非明示型」に分類され、専任媒介契約は「非専属型」と「専属型」に分類されます。
※ ③と④の区別について
④の専属型の専任媒介契約を「専属専任媒介契約」、③の非専属型の専任媒介契約を単に「専任媒介契約」と呼んで、両者を区別する場合もあります。
これらの分類の意味について順番に説明していきます。
「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の違い
まずは、「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の違いについて説明しましょう。
「一般媒介契約」とは他の宅建業者にも依頼できるタイプの媒介契約です。一方、「専任媒介契約」とは他の宅建業者には依頼できないタイプの媒介契約です。
もう少し具体的に説明します。以下の事例を見てください。
甲宅地を売りたいBが宅建業者Aに対して買主探しを依頼し、AB間で媒介契約が結ばれた。
もし、これが「一般媒介契約」である場合、BはA以外の宅建業者にも甲宅地の買主探しを依頼することができます。すなわち、BはA以外の宅建業者(例えば、宅建業者Cや宅建業者D)とも重ねて媒介契約を結ぶことで、買主探しを複数の宅建業者に依頼することができます。
一方、これが「専任媒介契約」である場合、BはA以外の宅建業者に甲宅地の買主探しを依頼することはできません。すなわち、BはA以外の宅建業者(例えば、宅建業者Cや宅建業者D)と重ねて媒介契約を結ぶことはできず、買主探しはもっぱら「宅建業者Aだけに任せる」という形になります。
以上が「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の違いになります。
ポイントは「一般媒介契約なら、複数の宅建業者に契約相手探しを任せることができるが、専任媒介契約の場合は一つの宅建業者にだけ契約相手探しを任せる形になる」ということです。
専任媒介契約を結ぶ場合、お客さんは自分の契約相手となる宅建業者がまともな宅建業者であるかどうかをしっかりと見極める必要があります。なぜなら、ハズレ業者にあたってしまうと、「いつまでたっても取引相手を見つけてくれない」という不利益を受けてしまうからです。
一般媒介契約「明示型」と「非明示型」の違い
続いて、一般媒介契約の分類「明示型」と「非明示型」の違いについて説明します。
「明示型」とはお客さんが他の宅建業者と媒介契約を結んだ場合にそれを明示する義務がある一般媒介契約のことをいいます。一方、「非明示型」とはそのような明示義務がない一般媒介契約のことをいいます。
先ほどと同じように、以下の事例を使って具体的に説明します。
甲宅地を売りたいBが宅建業者Aに対して買主探しを依頼し、AB間で媒介契約が結ばれた。
もし、このAB間の媒介契約が「明示型」の一般媒介契約である場合、BはA以外の宅建業者と媒介契約を結んだ場合、その事実をAに告げる必要があります。一方、AB間の媒介契約が「非明示型」の一般媒介契約である場合、BはA以外の宅建業者と媒介契約を結んだ場合でも、その事実をAに告げる必要はありません
例えば、できるだけ早く買主を見つけたかったBが、Aと媒介契約を結んだあと、宅建業者Cとも媒介契約を結んだとします。この場合、BはAに対して「宅建業者Cと媒介契約を結んだ」と告げる必要があるでしょうか?
AB間の媒介契約が「明示型」の一般媒介契約である場合は告げる必要があります。一方、AB間の媒介契約が「非明示型」の一般媒介契約である場合は告げる必要はありません。
以上が、「明示型」と「非明示型」の違いです。
専任媒介契約「非専属型」と「専属型」の違い
続いては、専任媒介契約の分類である「非専属型」と「専属型」の違いについて説明します。
「非専属型」とは自己発見取引が許される専任媒介契約であり、「専属型」とは自己発見取引が許されない専任媒介契約のことです。
上記の通り、「非専属型」と「専属型」の違いは「自己発見取引」が許されるかどうかという点にあります。
「自己発見取引」とは宅建業者と媒介契約を結んだお客さんが、宅建業者の見つけた人ではなく、自分で見つけた人と契約を結ぶことを言います。
これも具体例で説明しましょう。引き続き、「宅建業者Aが甲宅地を売りたいBと媒介契約を結んだ」という事例を使います。
このAB間の媒介契約が「専属型」の専任媒介契約である場合、Bは自分で見つけた取引相手と契約を結ぶことはできませんが、「非専属型」の専任媒介契約であれば、Bは自分で見つけた取引相手と契約を結ぶことができます。
例えば、Bが宅建業者Aと媒介契約を結んだ後、友人Cに対して甲宅地の買主を探していることを話したところ、Cから「甲土地を買いたい」と言われたとします。この場合、BはCと売買契約を結ぶことができるでしょうか?
AB間の媒介契約が専属型の専任媒介契約である場合、自己発見取引は禁止されるので、BはCと売買契約を結ぶことはできません。しかし、AB間の媒介契約が非専属型の専任媒介契約である場合、自己発見取引は禁止されないので、BはCと甲宅地の売買契約を結ぶことができます。
以上が「非専属型」と「専属型」の違いになります。
「媒介契約の種類」のまとめ
「媒介契約の種類」に関するポイントをまとめると、以下のようになります。しっかりと理解してください。
媒介契約の種類 | 他の業者とも媒介契約を結べるか? | 自己発見取引は許されるか? |
一般媒介契約 | 許される | 許される |
専任媒介契約 | 許されない | 許される |
専属専任媒介契約 | 許されない | 許されない |
媒介契約に関するルール
続いては「宅建業法が定める媒介契約のルール」について説明します。まずは、以下の3点を押さえてください。
- 媒介契約の有効期間
- 宅建業者の報告義務
- 指定流通機構への登録義務
①②③について、順番に説明していきます。
媒介契約の有効期間
宅建業法は「媒介契約の有効期間」について、以下のようなルールを定めています。
専任媒介契約は3か月を超える有効期間とすることができない
「媒介契約の有効期間」とは媒介契約に基づいて宅建業者がお客さんのための取引相手探しを行うことになる期間のことです。
例えば、宅建業者Aが甲宅地を売りたいBのために買主を見つけてあげる旨の媒介契約をBと結び、その有効期間が1か月と定められたとします。この場合、Aは有効期間として定められた1か月の間に、Bのために買主探しを行うことになります。
この1か月の間に、Aが無事に甲宅地の買主を見つけることができれば、AはBから報酬をもらうことができます。また、1か月以内にAが買主を見つけることができなかった場合は、AB間の売買契約は終了するか、契約更新によって引き続きAが買主探しをし続けることになります。
以上が「媒介契約の有効期間」に関する説明になります。
話を戻しましょう。
先ほど示した通り、宅建業法は「専任媒介契約の有効期間は最長3か月まで」というルールを定めています。それでは、なぜこうしたルールが定められているのでしょうか?
理由は「媒介契約における依頼者に他の宅建業者と媒介契約を結ぶ機会を確保する」という点にあります。
先ほど説明した通り、専任媒介契約が結ばれた場合、依頼者であるお客さんは他の宅建業者とは媒介契約を結ぶことができなくなります。にもかかわらず、有効期間が長期にわたる専任媒介契約が結ばれてしまうと、お客さんはその間に他の宅建業者と媒介契約を結ぶことができなくなってしまいます。
こうした不利益を避けるためのルールが「上限3か月ルール」です。そして、この「上限3か月ルール」について押さえておきたいポイントは以下の3つです。
- 専任媒介契約にだけ適用されるルールである
- 3か月を超える有効期間の定めは「3か月」とみなされる
- 契約更新は認められるが、依頼者の申し出が必要
まず、「①専任媒介契約にだけ適用されるルールである」というポイントについて説明します。
これは「上限3か月ルール」はもっぱら専任媒介契約に関するルールであり、一般媒介契約には適用がないということです。つまり、一般媒介契約には有効期間の制限は存在せず、有効期間を「1年」や「2年」と長期に設定することも可能です。
一般媒介契約の場合、依頼者であるお客さんは他の宅建業者に重ねて契約相手探しを依頼ができるので、専任媒介契約のように有効期間を制限する必要がないのです。
次に、「②3か月を超える有効期間の定めは『3か月』とみなされる」というポイントですが、これは上限3か月ルールに違反して、3か月を超える有効期間の専任媒介契約が結ばれたとしても、そのような有効期間の定めは許されず、有効期間は「3か月」として扱われるということです。
例えば、AB間で有効期間を6か月とする専任媒介契約が結ばれた場合でも、その有効期間は「3か月」となります。AB間の専任媒介契約そのものが無効になるわけではありませんので、注意してください。
最後に「③契約更新は認められるが、依頼者の申し出が必要」というポイントについて説明します。これは「専任媒介契約の更新には依頼者であるお客さんからの申出がなければならない」ということです。すなわち、専任媒介契約を自動更新としたり、宅建業者が勝手に契約を更新するようなことは許されません。
なお、更新後の有効期間の上限も3か月となりますので、その点も押さえておいてください。
「媒介契約の有効期間」に関する説明は以上です。
報告義務
続いては「報告義務」について説明します。
「報告義務」とは媒介契約を結んだ宅建業者は依頼者であるお客さんに対して、一定の場合に、一定の事項を報告しなければならないという義務のことです。
宅建業者の「報告義務」として、以下の2つを押さえてください。
- 契約申込があった場合の報告義務
- 業務処理状況の報告義務
①は、媒介契約の目的物である宅地や建物について契約の申込みがあった場合、宅建業者はそのことを依頼者であるお客さんに報告しなければならないという義務です。
例えば、宅建業者Aが甲宅地を売りたいBのために買主を見つけてあげる旨の媒介契約を結んだとします。その後、Cが「甲土地を買いたい」とAに対して、売買契約の申込みをしてきた場合、AはそのことをちゃんとBに報告しなければなりません。
これが、「契約申し込みがあった場合の報告義務」です。
なお、この義務は、媒介契約の種類にかかわらず宅建業者が負わなければならない義務であるという点に注意してください。すなわち、お客さんと結んだ媒介契約が「一般媒介契約」「専任媒介契約」のいずれであっても、宅建業者はこの報告義務を負います。
一方、②は専任媒介契約を結んだ宅建業者は契約相手探しの進捗状況を一定の頻度で依頼者に報告しなければならないという義務です。
宅建業者がこの報告義務をきちんと果たすことで、媒介契約の相手であるお客さんは「宅建業者の仕事ぶりを知ることができる」という利益を受けられます。
なお、以下の表にある通り、報告の頻度は「専任媒介契約(非専属型)」と「専属専任媒介契約」で異なりますので、注意しましょう。
媒介契約の種類 | 報告の頻度 |
専任媒介契約(非専属型) | 2週間に1回以上 |
専属専任媒介契約 | 1週間に1回以上 |
上記の通り、「非専属型の専任媒介契約」の場合は、最低でも「2週間に1回」、「専属型の専任媒介契約(専属専任媒介契約)」の場合は、最低でも「1週間に1回」は業務処理状況の報告をしなければならないとされています。
ちなみに、①と異なり、一般媒介契約を締結した宅建業者は、こちらの報告義務は負いませんので、注意してください。
先に述べたように、一般媒介契約は他の宅建業者にも依頼できる媒介契約であり、お客さんにとって「不都合が少ない」媒介契約といえます。そのため、専任媒介契約に比べて、宅建業法の規制も緩くなっているのです。
以上のように、宅建業法は媒介契約を締結した宅建業者に対して、2つの報告義務を課しているわけですが、宅建業者がこれらの報告義務を果たす際の報告方法については定めがありません。すなわち、報告方法は基本的に自由であり、例えば、電話やEメールを利用するなどの方法で依頼者に報告することが許されます。
「報告義務」に関する説明は以上です。
指定流通機構への登録義務
続いては、「指定流通機構への登録義務」について説明します。
「指定流通機構」とは宅建業者間でスムーズな物件情報のやり取りを実現する仕組みである【レインズ】を運用する組織のことです。
簡単に言えば、「レインズ」とは宅建業者がだけが見れる不動産情報サイトのようなものです。これを見ることで、宅建業者は誰がどんな物件を売りたがっているのかを簡単に確認することができます。そして、この「レインズ」を管理・運用しているのが「指定流通機構」というわけです。
そして、「指定流通機構への登録」とは宅建業者がレインズに媒介契約の目的物である宅地や建物の基本情報を登録することをいいます。
「指定流通機構への登録」が行われると、全国の宅建業者は登録された物件の情報をレインズで確認できるようになります。そのため、この登録がなされない場合に比べて、媒介契約を結んだ宅建業者はすばやくお客さんの契約相手を見つけることができるようになります。
以上のような理由から、お客さんと専任媒介契約を結んだ宅建業者は、下記の期間内に指定流通機構へ登録しなければならないとされています。
専任媒介契約(非専属型) | 媒介契約締結日から7日以内 |
専属専任媒介契約 | 媒介契約締結日から5日以内 |
なお、指定流通機構への登録を済ませた宅建業者は、指定流通機構が発行する登録証明書を依頼者に引き渡さなければならないものとされています。
また、指定流通機構に登録した宅地や建物について契約が成立した場合、宅建業者は契約成立日や取引価格などの一定事項を指定流通機構に通知しなければならないものとされています。
媒介契約書の記載事項
最後に、「媒介契約書の記載事項」について説明します。
後のトラブルを防止するため、媒介契約を結んだ宅建業者は、媒介契約書を作成し、それを依頼者であるお客さんに交付しなければならないルールとなっています。
そして、媒介契約書に記載しなければならない事項は宅建業法で定められています。これを「媒介契約書の記載事項」と言い、その具体的内容は以下の通りです。
- 宅地建物の所在等の基本情報
- 宅地建物を売買価額又は評価額
- 媒介契約の種類
- 建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項(既存建物の媒介契約の場合)
- 媒介契約の有効期間・解除に関する事項
- 指定流通機構への登録に関する事項
- 報酬に関する事項
- その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
色々ありますが、とりあえずは①③⑦あたりを押さえておいてください。すなわち、「媒介契約の対象となる物件の基本情報」、「媒介契約の種類(4種類のうちのどれにあたるか)」、「報酬関係(報酬額や報酬支払時期など)」については媒介契約書に記載しなければならないということです。
まとめ
「媒介契約」に関する基礎知識の説明は以上です。
今日はここまでとします。お疲れさまでした。