受験ガイド

徹底解説!宅建試験

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不動産に関する国家資格の中でも、圧倒的な知名度を誇る「宅建試験」。比較的取りやすい資格ということもあり、毎年多くの人が受験しています。

どのような試験にも言えることですが、最短ルートで効率よく合格を勝ち取るには、まず試験そのものをよく理解することが大切です。

そこで、宅建試験の内容や押さえておくべきポイントについて、実際に受験指導をしている講師の視点から、徹底的に解説していきたいと思います。単なる試験情報の紹介にとどまらない実戦的な内容になっていますので、これから宅建の勉強を始める受験生は要チェックです。

少々長くなりますが、張り切っていきましょう!

受験資格・合格によるメリット

正式名称

宅建試験の正式名称は「宅地建物取引士試験」です。国籍、年齢、学歴などによる受験資格の制限はないので、誰でも受験することができます

この試験に合格すると、「宅地建物取引士(宅建士)」になる資格を得ることができます。

「宅建士」とは?

「宅建士」はどんな人でしょうか?「宅建士」という言葉は知っていても、どんな仕事をするのかよくわからない…という人もいるのではないでしょうか?(受験生時代の私がそうでした_笑)。

簡単に言えば、宅建士とは「不動産屋で働く不動産取引のプロ」であり、「不動産屋のお客さんがトラブルなく不動産取引を行えるようにしっかりサポートしてあげる」という役割を果たす存在です

もう少し具体的に説明しましょう。

一般的な不動産屋のお客さんにとって、不動産(=土地や建物のこと)の購入はとても大きな買い物であり、失敗は許されません。いざ、不動産を買った後で「こんな物件、買うんじゃなかった!」となってしまったら大変です。

では、こうした悲劇が起こらないようにするためには、どうすればよいでしょうか?

それは、売買契約を結ぶ前に不動産の状態や契約内容などの重要事項をお客さんにきちんと理解してもらうことです。自分が取引する物件や契約内容について、お客さん自身がきちんと理解しておけば、契約後に「やっぱり買うんじゃなかった」と後悔してしまう可能性はグッと低くなるはずです。

この「契約前の段階でお客さんに重要事項をしっかり説明してあげる」という役割を果たすのが宅建士です。これを専門用語で「重要事項説明」と言い、宅建士にしかできない仕事の一つになっています。

宅建士にしかできない仕事は他にも色々ありますが、それらはまた別の機会に説明したいと思います。

以上の説明からもわかるように、宅建士として仕事をするには、不動産取引やそれに関する法律について精通していなければなりません。だからこそ、「宅建試験に合格した人だけが宅建士になれる」という仕組みになっているのです。

その他のメリット

宅建試験に合格よるメリットは「宅建士になれる」というだけではありません。他にも、①就職・転職でアピールできる、②宅建業で独立開業しやすくなる、③会社から「資格手当」がもらえる、④マイホームを買う際に不動産会社に舐められずに済む_などのメリットが挙げられます。

ただ、試験合格によるメリットがあるかないかは、結局のところ、人によります。宅建試験に合格するためには、それなりに時間をかけて勉強しなければなりませんので、それに見合うだけのメリットがあるかどうかをしっかり考えて、受験するかどうかを決めるのが重要です。

「宅建試験」のスケジュール

全体のスケジュール

 
試験日時 10月の第3日曜日 13:00~15:00
申込期間 郵送申込み 7月1日から7月30日
インターネット申込み 7月1日~7月中旬
合格発表 11月の最終水曜日又は12月の第1水曜日

試験日時

宅建試験は毎年10月の第3日曜日に実施されます。試験は「年1回」だけなので、その年の試験で不合格になってしまうと、更なる受験生活と「次は落ちれない!」というプレッシャーが待ち受けていますので、一発合格の覚悟をもって受験しましょう。

試験の実施時間は13:00~15:00の2時間です。やや長いですが、途中休憩はありません。本番では2時間しっかりと集中力を持続させる必要がありますので、自信がない人は受験勉強を通じて、この点も鍛えておく必要があります。

申込手続

宅建試験を受験するには、大学受験などと同じように申込み(=出願)する必要があります。申込時期は毎年7月です。申込方法は①郵送と②インターネットの2つがあります。なお、インターネット申込みの締切は7月中旬までとなっており、郵送申込みよりも出願期間が短くなっているので、注意してください。

出願の際に必要な書類はそれほど多くなく、その手続きはあまり面倒なものではありませんが、7,000円というやや高めの受験料を出願時に支払う必要があります。他の資格試験と同様、何らかの事情で本試験を受験しなかった場合でも基本的に受験料は返金されません。また、受験料は宅建試験を受験するたびにかかるので、余計な出費を抑えるためにも、なるべく一発合格を目指してください。

そのほか、受験会場の選択も出願時に行います。基本的には、都道府県単位で自分の希望する受験会場を選択することができます。

「宅建試験」の内容

出題数と出題形式

出題数 全50問(5問免除者は全45問)
出題形式 4択問題(マークシート方式)

宅建試験の出題数は「全50問」、出題形式は4つの選択肢から正解の選択肢を一つ選んでマークシートに記入する「4択問題」です

宅建試験は50問すべてが4択問題なので、適当に選択肢を選んでも、25%の確率で正解することができます。しかし、だからといって「宅建試験はカンタンだ!」などと油断しないようにしてください。

これまでの私の指導経験に照らしても、「合格レベルの実力を持たない受験生が勘で選択肢を選び続けた結果、運よく連続正解して合格した」という例はほとんどありません。

言うまでもありませんが、「運まかせ」の受験戦略はあえなく破綻しますので、しっかり勉強するようにしてください。

出題例

続いて、実際の試験問題を見てみましょう。以下は、2019年に実際に出題された宅建業法の問題(問32)です。

宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が受け取ることのできる報酬額に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において報酬額に含まれる消費税等相当額は税率8%で計算するものとする。

1 宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の代理について、通常の売買の代理と比較して現地調査等の費用が8万円(消費税等相当額を含まない。)多く要した場合、売主Bと合意していた場合には、AはBから302,400円を上限として報酬を受領することができる。

2 事務所(1か月の借賃108万円。消費税等相当額を含む。)の貸借の媒介について、Aは依頼者の双方から合計で108万円を上限として報酬を受領することができる。

3 既存住宅の売買の媒介について、Aが売主Cに対して建物状況調査を実施する者をあっせんした場合、AはCから報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。

4 宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、通常の売買の媒介と比較して現地調査等の費用を多く要しない場合でも、売主Dと合意していた場合には、AはDから194,400円を報酬として受領することができる。

出典元:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 宅建試験の問題及び正解番号表(令和元年度試験問題【問32】)

問題文の長さや難易度は問題によって異なりますが、このような4択問題を2時間で50問も解かなければならないのが宅建試験です。

「思ったより大変そうだな…」という印象を持つかもしれませんが、こうした事実を受験勉強を始める前の段階できちんと把握し、受験に対する正しい心構えを持っておくことはとても大切なことです。

「試験問題」という対戦相手を正しく理解しておきましょう。

時間配分

また、本番での時間配分についても説明しておきましょう。宅建の試験時間は2時間なので、単純計算すると、1問解答するのに使える時間は2分24秒になります。

2時間=120分

120分÷50問=2.4分(2分24秒)

もっとも、実際にはマークシートに記入する時間や見直しの時間などが必要になり、それらを考慮すれば、「1問あたり約2分」というのが基本ペースとなります。

ある程度の実力がつくまでは、解答スピードを上げることは考えなくてもよいですが、「本番では、サクサク解答していかないと時間不足になってしまうおそれがある」ということを今のうちに頭に入れておきましょう。

5問免除

宅建試験には「5問免除」という制度があります。これは、一定の講習(「登録講習」と言います)を受けた人は、宅建試験で出題される全50問のうちのラスト5問(問46~問50)に解答しなくてもよいというもので、かつ、試験の合格点が通常の受験生より5点も低くなるという制度です。

例えば、通常の受験生の合格点が35点である場合、5問免除の受験生の合格点は30点になります。

簡単に言えば、5問免除制度を利用することで、本試験での点数が通常の受験生に比べて5点分上乗せされるような形になるため、試験に合格しやすくなるということです。

もっとも、この制度には注意点が2つあります。

一つは、この制度を利用する場合は試験時間が「10分間」短くなり、1時間50分で45問に解答しなければならないということです。もう一つは、この制度は不動産会社で働いている人しか利用できない制度であるということです。

このように、5問免除制度を利用できるのは、一部の人に限られるものの、利用できる人は積極的に利用するようにしてください。この制度を利用するには、講習を受ける必要があるため、時間とお金はかかりますが、受験勉強の分量を減らすことができるので、費用対効果が高いからです。

なお、5問免除制度に関する詳しい説明は、宅建試験の実施団体である「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」のウェブページに掲載されていますので、制度の利用を考えている人は確認してみてください。

試験科目

全部で4科目

次に、「宅建試験の試験科目」について説明していきます。一般的に宅建試験の試験科目は、以下の4科目であると言われます。

試験科目 出題数 具体的内容
宅建業法 20問 「宅建業法(19問)」のほか、「住宅瑕疵担保履行法(1問)」に関する問題が出題される。
権利関係 14問 「民法(10問)」のほか、「借地借家法(2問)」「区分所有法(1問)」「不動産登記法(1問)」に関する問題が出題される。
法令上の制限 8問 「都市計画法(2問)」「建築基準法(2問)」のほか、「土地区画整理法(1問)」「農地法(1問)」「宅地造成等規制法(1問)」「国土利用計画法(1問)」等に関する問題が出題される。
税・その他 8問 不動産取引に関係する税金に関する問題(2問)のほか、不動産に関する統計や基礎知識についての問題(3問)、「住宅金融支援機構法(1問)」「景品表示法(1問)」「地価公示法(1問)」に関する問題などが出題される。

「宅建業法」

「宅建業法」とは宅建業者(≒不動産屋)が守らなければならないルールが定められている法律です。これに関する試験問題は毎年20問出題されています。つまり、宅建試験4割は宅建業法からの出題ということなので、そのウエイトがとても大きくなっています。「宅建業法」は宅建試験における最重要科目であり、合格のためにはしっかりと時間をかけて勉強する必要があります。

また、その出題内容は基本的知識を問うものが多いので、過去問演習などの対策をしっかりすれば、本番でもかなりの高得点(8割以上)を取ることができます。

なお、試験科目としての「宅建業法」には、その関連法規である「住宅瑕疵担保履行法」という法律も含まれます。これについての問題は毎年1問だけ出題されています。

権利関係

「権利関係」とは土地や建物の権利に関する出題される科目です。出題数は全部で14問であり、宅建業法に次ぐ重要科目になります。

出題の中心は「民法」であり、毎年10問程度出題されます。そのほか、「借地借家法」から2問、「区分所有法」と「不動産登記法」から各1問ずつ出題されます。

「民法」は条文数が1000条を超える法律であり、すべてをまともに勉強すると、とても時間がかかります。また、難易度が高い問題が出題される場合もあるので、深入りは禁物です。まずは、過去問で問われている分野を中心に基礎知識を固めましょう。

また、民法以外の科目(借地借家法・区分所有法・不動産登記法)については、民法について理解していることが勉強の前提になりますので、権利関係の勉強はまず民法から勉強を始めるとよいでしょう。

「法理上の制限」及び「税・その他」

「法令上の制限」とは建築制限や土地の利用制限といった土地や建物に関する様々な規制のルールを定めている法律についての問題が出題される科目です。

出題の中心は「都市計画法」「建築基準法」であり、各2問ずつ出題されます。そのほか、「土地区画整理法」「農地法」「宅地造成等規制法」「国土利用計画法」などに関する問題が各1問程度出題されます。

最後に、「税・その他」ですが、「税」に関する問題は不動産取引に関係する税金の知識を問う問題が出題されます。一方、「その他」では、不動産に関する基礎知識や統計に関する問題が出題されます。

なお、「法令上の制限」と「税・その他」という試験科目は「宅建業法」や「権利関係」に比べ重要度が下がるため、勉強が間に合わなくなってしまったり、ほとんど勉強しないまま本試験を迎えてしまう受験生が一定数います。

しかし、宅建試験に合格するためには、これらの科目もそれなりに勉強して、そこそこの点数を取る必要がありますので、勉強を後回しにしすぎないように注意してください。

また、「税法は全て捨てる」「法令上の制限は都市計画法と建築基準法しかやらない」などのいわゆる「捨てる」という戦略も基本的にはNGです。宅建試験では、過去問学習をしていれば解ける問題が出題されることが多く、こうした問題を取りこぼすのはもったいないからです。

「○○は捨てる」という戦略は分かりやすい戦略ですが、必ずしも効果的な戦略ではありませんので注意してください。

宅建試験の試験科目に関する説明は以上です。試験科目ごとの具体的な勉強法についてはまた別の機会に説明したいと思います。

受験者数・合格率・合格点

受験者数 約20万人(2020年)
合格率 約15%~17%(直近10年間のデータ)
合格点 31点~38点(直近10年間のデータ)

2020年はコロナの影響で10月と12月の2回に分けて宅建試験が行われましたが、合計約20万人が宅建試験を受験しました。これは他の国家資格と比べてもダントツに多い数です。例えば、同じ法律系の国家資格である行政書士試験や社労士試験の受験者数は約4万人、司法書士試験は1万4千人(2019年度試験)となっています。

このような事情もあり、「宅建試験は人気の国家資格である」と言われます。

また、宅建試験の合格率はここ10年間、だいたい15%~17%で推移しています。今後も、この数字が大きく変わることはなく、現在のような比較的低めの合格率が続いていくことが予想されます。

この数字を見ても明らかなように、「宅建試験は簡単だ」などと安易に考えると痛い目にあいますので、注意しましょう。

ちなみに、宅建試験の合格率が15%程度で推移している理由は、全受験生の中で上位15%程度の点数を取った者を合格としているからです。

すなわち、宅建試験は「○○点以上の人はすべて合格」というような、あらかじめ合格点が決まっている絶対評価の試験ではなく、相対評価の試験であるということです。

こうした理由から、宅建試験の合格点は年によって異なります。実際に、ここ10年の宅建試験の合格点は31点~37点であり、年によって大きな違いがあります。とはいえ、だいたい35点くらい取ることができれば、上位15%に入ることができて合格できる場合が多くなっているので、目標ラインはひとまず35点(正解率7割)と考えてもらえればOKです

なお、宅建試験の配点は科目を問わず1問1点なので、単純に50問中35問の正解すれば、得点は35点になります。また、科目ごとの「足切りライン」もありませんので、仮に権利関係(14問)はすべて不正解、それ以外(36問)はすべて正解という人がいた場合、その人の得点は36点となり、合格点が35点であるなら、その人は「合格」ということになります。

まとめ

宅建試験に関する基本的な説明は以上です。

冒頭でもお話しましたが、宅建試験合格に向けて効率的な勉強をするには、宅建試験をよく理解することが必要不可欠です。宅建試験の詳細については、試験の実施団体である「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」のウェブサイトのほか、多くのサイトで様々な説明がなされています。

もし、何か気になることがあれば、各自宅建試験について調べてみてください。それでは、今日はここまでにします。お疲れさまでした。